NF-JLEPサポートプログラム「訪日研究フェローシップ」の2020年度受賞者、スシ・ウィディアンティさんの訪日研究報告会を2022年11月29日に開催しました。報告会には、審査をしていただいた、阿部新 東京外国語大学准教授と、西村美保 清泉女子大学教授にもご出席いただき学術的観点からアドバイスを頂戴し、有意義な会となりました。
研究テーマ:「日本企業におけるインドネシア人会社員の日本文化適応」
ウィディアンティさんは、日本在住のインドネシア人が職場で日本人職員のコミュニケーションの特徴をどのように理解し、職場に適応するためにどのような努力をするかを明らかにすることを目的として、従来からこの研究に取り組んできました。今回の訪日研究では、茨城大学を拠点として、2022年10月から2か月間、首都圏を中心に、以前にインタビューした在日インドネシア人や新たな対象者に、対面で調査を実施しました。
インタビューで見えてきたことは、在日インドネシア人は、日本語の敬語、職場におけるフォーマルな言い回し、曖昧さ、専門用語の理解に苦慮していることでした。例えば、日本の職場では断定的な返事を避ける傾向にありますが、「検討します」が否定的な意味で使われた場合でも、インドネシア人にとっては、言葉通り「検討する」と誤解してしまうそうです。
カルチャーショックを乗り越えるために、インタビュー対象者は、職場の上司への相談、ストレス解消のためインドネシア人や日本人の友人との交流、日本流の仕事へのチャレンジなど、日本の職場に適応するために様々な努力をしていることもわかりました。
以前にインタビューした在日インドネシア人には、仕事に対する考え方の変化もみられました。日本語の理解が深まったことはもちろん、日本流の仕事の仕方への共感もみられたそうです。日本の職場でコミュニケーションの基本とされる「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」をプロフェッショナルと思うようになったという事例が紹介されました。
質疑応答では、阿部先生と西村先生より、インタビューで収集したデータの分析に関して学術的なアドバイスをいただき、ウィディアンティさんには大変貴重な機会となりました。
今後、ウィディアンティさんは、研究結果を異文化理解の教材作成に活かすだけでなく、インドネシアの学生が日本企業に円滑に適応できるように情報をまとめる予定です。また、雇用側である日本企業にとっても、インドネシア人職員が直面している問題を理解する一助としたいと抱負も語ってくれました。インドネシア人の日本企業への就職機会が増えるなかで、大変有意義な研究となりそうです。
NF-JLEP Association事務局では、本研究をベースとしてウィディアンティさんのますますのご活躍を期待しております。