インドネシアでは、1997年にインドネシア教育大学に基金が設置され、現在は、インドネシア教育大学、 国立スラバヤ大学、マナド国立大学の成績優秀な大学生、大学院生への奨学金給付などの事業を実施しています。
インドネシアのプログラムでは、奨学金給付事業の一環として、修士論文の執筆を目的とした来日研究を支援しています。この度、2016年度の奨学生である、インドネシア教育大学修士2年生のシティ・ファリダさん(Siti Faridah)が、2017年1月に事務局を来訪しました。ファリダさんは、これから3か月間、特別研究生として金沢大学で研究をします。
ファリダさんは、学部時代は日本語教育を専攻し、メディアに使用されている日本語を中心に研究を行いました。その知識を基に、動画や音楽を日本語教育に生かしたいと考え、大学院でも研究を続けています。母語話者との接触が限定される海外の日本語教育では、メディアの利用は特に有用だと考え、日本語教育のさらなる発展への貢献が期待されます。
専門は認知言語学で、修士研究では、恋愛歌謡曲の歌詞における比喩をテーマに、インドネシア語と日本語の比較分析を行っています。歌詞を比較し、言語間の差異、とりわけ日本語に特有のあいまい表現を理解することを目的としています。
歌謡曲の中でも恋愛に関する作品を取り上げた理由は、これらの歌には、愛情、感謝を表すフレーズや、日本語母語話者が用いる自然な感情表現の言い回しが多く含まれるからです。歌詞を用いた学習を通じて、最終的には、日本語学習者の円滑なコミュニケーションを促すことを目指します。インドネシアの日本語学習者は、日本のポップカルチャーへの興味が高く、歌謡曲を使った学習は、彼らの学習意欲を保つことにもつながると期待されます。
金沢大学では、より多くの資料収集を行い、また、母語話者の意識調査を実施する予定です。
ファリダさんは、大学院に通う一方で、インドネシアの日本語学校でも教鞭をとっています。学生から社会人まで多くの生徒を相手にしており、日本語の指導経験は既に豊富です。今後は、大学で指導することを目標に、日本での修士課程や、博士課程への進学を視野に入れています。
日本語能力検定N1級を保持する実力だけあって、ファリダさんの日本語は非常に堪能でした。インドネシアの中等教育では、日本語を含む第二外国語が必修ではなくなり、残念ながら日本語学習者数は減少傾向にありますが、高等教育での日本語人気はいまだに根強いです。ファリダさんのような優秀な学生が、今後のインドネシアの日本語教育をますます盛り上げてくれることを大いに期待しています。
ファリダさんは、3月末に事務局に再度来訪し、次回は金沢大学での研究についての発表をする予定です。結果についても、追ってご報告いたします。