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  • 2018.10.17

トルコのチャナッカレ大学訪日フェローとの交流

  • -NF-JLEP Association事務局

チャナッカレ大学のNF-JLEPプログラムでは、奨学金給付事業の一環として、日本語・日本文化の理解の向上を目的とした来日研修を支援しています。この度、2017年度の奨学生であり、大学3年生のギョクハン・ダーデヴィルさん、ハジェル・テラマンさん、ラービア・バルカンジヤシャルさん、スハー・カライジさん、エミネ・ビヒテル・チャクルさんの5名が、2018年8月16日にNF-JLEP Association事務局を来訪し、研修成果を発表しました。

石川県日本語・日本文化研修

この来日研修では、チャナッカレ大学のNF-JLEPフェローのうち、成績優秀者の中から作文と面接の厳しい選抜に合格した5~6名が、毎年夏に3週間日本に滞在します。石川県国際交流センターにて日本語と伝統文化について学ぶと共に、それぞれ日本文化に関する課題を選び、調査活動と発表を行います。トルコからの引率教師なしで来日し、金沢でホームステイし、日本語を使って日本人にインタビューを行うなど、実践的に日本語を学ぶチャンスであり、例年参加者の満足度が非常に高い研修です。

金沢での3週間

チャナッカレ大学の日本語教育学科では、5人の日本人を含む日本語教師たちが集中的な指導をおこなっており、訪日前からフェローたちはみな驚くほど日本語が流暢でした。フェロー自身も初めて日本を訪れても戸惑いはなく、積極的に日本人とコミュニケーションをとれたそうです。例えば、金沢滞在中に少しでも多くの日本人と話せるように、5人のフェローが一緒にバスに乗るときは固まらず、別々に座って地元の日本人と話す、など懸命に工夫して3週間を過ごしたとのことです。また、金沢とその周辺には世界中から留学生や旅行者が集まってくるため、様々な地域からやってきた外国人と、時には能登の露天風呂で日本語で語り合うという不思議な体験もできました。

風呂敷とホストファミリー

前出のとおり、フェローたちは金沢滞在中に日本文化に関する調査を実施しました。今回訪れた5人は、3人と2人のチームに分かれて、「風呂敷」と「ホストファミリーと留学生の関係」の調査を行いました。

「風呂敷」のチームは、まず金沢で街頭インタビューを重ね、若者の風呂敷活用について調査し、風呂敷に対する意識と可能性を探りました。風呂敷には興味はあるけど、使い方がわからない、おしゃれな風呂敷がない、といった実態が浮かび上がり、最終的に、発表会では、若者を取り込めるような包み方、おしゃれな使い方の提案などを行いました。

フェローたちの話によると、トルコにも「ボーチャ」という、風呂敷に似た結婚式などのお祝いの品を包む布があり、日本の袱紗(ふくさ)との共通点があるそうです。フェローたちの風呂敷の説明から、「なぜ唐草模様の風呂敷は、泥棒の記号になったか」、「風呂敷の語源とは?」など日本人である私たちも学ぶ部分が多くあり、貴重な文化交流となりました。「風呂敷」のキーワードから、日本とトルコの様々な文化的共通点の議論となり、研修報告会は大いに盛り上がりました。

「ホストファミリーと留学生の関係」ついて調査したチームは、17のホストファミリーを対象にしたアンケート実施を通じて、今まで受け入れた留学生の実態などを調査し、留学生が日本人の受け入れ家族に与える影響などについて探りました。結果として、ホームステイは、留学生のみならず、ホストファミリーにとっても、貴重な“留学”体験であり、それぞれの留学生の文化背景について学び、影響を受ける機会であることがわかりました。

日本での発見

訪日前から日本語が流暢な5人でしたが、初めて訪れた日本では多くの発見がありました。例えば、車が来なくても、赤信号で止まる日本人の歩行者に疑問を感じつつも、歩き出したい衝動を我慢したり、トルコよりもゴミ箱が少ないことに驚き、一日中ゴミを持って歩いたりしたことです。フェローのひとりは、ブックオフなどの中古販売店に感動していました。特に、販売されている中古品の状態のよさ、傷の説明までパッケージに記載されていることに、日本人の物を大切に扱う習慣を実感したそうです。

また、日本語には、複雑な丁寧語、謙譲語、尊敬語などの表現があり、それはトルコ語にはないもので、繊細なコミュニケーションが可能になることに魅力を感じる、とのフェローの意見もありました。

日本語に関わる将来

5人がNF-JLEP Association事務局を訪問した日は、トルコリラが急落した8月13日の直後でした。トルコの政権不安、経済危機など困難な環境の中で不安を感じつつも、前向きに将来の夢を追いかける姿が印象的でした。

5人の内4人は日本語教師を、もう1人は日本で声優になることを目指しており、それぞれの日本語に関わる将来について、熱く語ってくれました。すでに日本での長期留学が決まっているフェローもおり、それぞれ真剣に、夢の実現に向けて取り組んでいる様子が伝わってきました。みなさんの今後の活躍が非常に楽しみです。