• レポート
  • 2020.04.02

第一回NF-JLEP日本訪問プログラム参加体験記~その⑤~

2020年1月11日から22日まで東京財団政策研究所人材育成プログラムに参加できたことによって予想していた以上に、有意義な経験になりました。オーストラリア、クィーンズランド州で三つの小学校で日本語を教えている教師として、この日本訪問プログラムの期間中、オーストラリア、ビクトリア州を始め、インドネシアとルーマニアで日本語を教えている方と共に参加できたことは非常にありがたいです。それぞれの教えている環境や生徒の日本語を勉強するモチベーションなどを話していただき、日本語教育や一般的な外国語教育の大切さを改めて実感いたしました。

ホストファミリーとすき焼き

プログラム内容は数ヶ月前から始まりました。それぞれの研修生が母国にいる間、プログラムの正式期間中に体験したいことや作成したい教材の提案準備が大事なプログラムの始まりでした。一月の東京での顔合わせと説明会に集まった研修生5名は東京財団政策研究所の仕事内容やこのプログラムの目的を直接伺いより明確に趣旨が理解できました。参加研修生のそれぞれのプログラムへの期待を話し合う大切な時間でもありした。それを持って、1月13日に金沢へ向かいました。

新幹線での移動中の時間も大切な時間でした。インドネシア、ルーマニアとオーストラリアの日本語教師同士で教育について語り合う時間となりました。そして、もちろん日本が初めてのインドネシアからのマルテン先生と日本の風景、初めての雪景色などを一緒に楽しみながらあっという間に金沢へ到着しました。

金沢では石川ジャパニーズ・スタディーズ・プログラムを受けました。同じ時期に韓国、中国、スイス、ブラジルなどからも学生が来ていました。色々な国の方々と話す時、共通の言葉が日本語だったから、これもまた予想していなかった素敵な経験となりました。私たちの石川ジャパニーズ・スタディーズ・プログラムでの主な目的は、帰国してから自分たちの授業に役に立つ教材を作成することでした。オーストラリアでは作成しにくいものをこの大切な機会を利用して、せっかく日本にいるからこそ作成できる教材がいいと思いました。

私の生徒は私の声を聞きなれていますが、できれば色々な人の声が聞けたら楽しいと思いました。そこで、十数名の方と簡単なインタビューをして録音した音声で教材を作ることにしました。生の日本人の声を録音する予定でしたが、石川ジャパニーズ・スタディーズ・プログラムに日本語ができるインドネシア人、ルーマニア人、中国人、韓国人、スイス人とブラジル人もいたので、結局色々な方の日本語の声を録音することができました。期待していたもの以上の教材となりました。録音した音声を利用して様々な使い方ができます。Quizizzのようなオンライン・ゲームのための問題に使ったり、パワーポイントで作るJeopardy形式のゲームのための問題に使ったり、リスニング・テストのための教材にも使ったりできます。私の生徒は初心者の小学生なので、録音した内容は初心者向けですが、幅広く世界中の色々な日本語の先生に利用していただければ嬉しいです。

東京財団政策研究所人材育成プログラムの他の特徴は金沢に滞在の間、ホームステイをしたことと、毎日の石川ジャパニーズ・スタディーズ・プログラムの予定に文化体験が含まれていたことです。小学校訪問、水引細工、日本料理体験がいい思い出になったと共に、日本語を教える際に授業にも取り入れられることもできます。教師として私は特に小学校を訪問できたことが印象的でした。授業を参観できたことは大変面白くて勉強になりました。放課後に先生が詳しく授業内容について話してくださり、私たちの質問に丁寧に答えてくださったことに感謝いたします。

料理体験

週末に能登半島に一泊旅行ができたこともとてもいい経験でした。振り返って思うと短い期間に本当に盛りだくさんのプログラムを用意していただきました。感謝の気持ちでいっぱいです。

帰国して間も無く新学年が始まりました。早速生徒に一月の東京や金沢での体験を話し、人材育成プログラムで作成した教材を授業で取り入れました。毎週、一つずつ紹介していっても一年を通して全部の体験を紹介し切れないと思います。自分で作成した教材を利用してから、他の研修生の教材も是非使ってみたいと思います。このプログラムのお陰で日本と日本語が私の生徒にとってより身近に感じてもらえる気がします。

オーストラリアに日本語教師が多いので、是非このプログラムで作成された教材をオーストラリアの日本語教師コミュニティーにも紹介していきたいと思います。今回プログラムに参加できた5名の教師だけではなく、より多くの日本語教師に役に立てることによって、東京財団政策研究所の今回の趣旨に最も求めていた結果になるのではないかと期待しております。

著者略歴

冨永キャスリン(Kathryn Tominaga):オーストラリア・クィーンズランド州出身。クィーンズランド大学より学士号、修士号取得後、現在、クィーンズランド州ブリスベン市にある3つの小学校で日本語教師として教鞭をとる。主に、小学校4、5、6年生向けの初級日本語会話を担当する。クィーンズランド州語学教師会会長などを歴任。語学の教育及び語学教師の研修に高い関心を持ち、これからもできるだけ多くの子どもたちに語学の素晴らしさを伝えていきたいと考えている。