ニュージーランドでは、マッセイ大学に基金が設置され、その基金を活用して、ニュージーランド全国を対象とした、小中高校の日本語教師への支援をはじめ、日本語専攻の成績優秀な大学生への奨学金支給や、全大学を対象とした日本語スピーチコンテストへの支援などの事業を実施しています。
この度、ニュージーランドのNF-JLEPフェロー、タネトア・ウェブスターさん(Tanetoa Webster)が、第1回全ニュージーランド大学日本語スピーチコンテストで優勝しました。ニュージーランドの全大学を対象とした日本語スピーチコンテストは、今回が初めてで、ニュージーランド日本研究学会(Japanese Studies Aotearoa New Zealand)が2014年8月に開催しました。NF-JLEPからは、優勝賞品の日本往復航空券が提供されました。(写真:ウェブスターさんが4月に事務局を来訪。スピーチコンテスト優勝を報告してくれました。)
記念すべき第1回の優勝者となったウェブスターさんは、コンテストで、オーストリア生まれの哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインの言葉「私の言語の限界は私の世界の限界を意味する」を引用し、日本語が彼の人生の幅を広げてくれた経験から、外国語学習の意義を訴え、優勝しました。ウェブスターさんのスピーチはこちら(タイトルは『The Path I Chose』)。
ニュージーランドの中等教育(日本の中学校、高校に相当)では、外国語学習は必修科目ではなく選択科目です。同国の教育省の調査によると、2014年は、1933年の調査開始以来、外国語を選択する生徒の割合が最も低くなり、5人にひとりしかいませんでした。そのため、外国語への関心は低く、ウェブスターさんの高校卒業時、同級生約300人のなかで大学で外国語を専攻しようという人は、数人しかいなかったそうで、自分の選択に不安を抱いたそうです。しかし、日本語を学び自分の世界を広げていった、ウェブスターさんの選択は、間違っていなかったのではないでしょうか。
ウェブスターさんは、7年生と8年生(日本では中学校1年と2年に相当)の時、複数の外国語を体験する授業を受け、日本語に興味を持ちました。ヨーロッパ言語とは全く異なる点、特に、日本語の発音に惹かれたそうです。その後、Christchurch Polytechnic Institute of Technologyの人文学部日本語学科に進学し、在学中の4年間、NF-JLEPの優秀学生を対象とする奨学金を授与されました。
ウェブスターさんの日本語学習熱はとても高く、訪問中も、初めて目にする漢字や言い回しについて、積極的に質問し、学んでいました。こうした学びの姿勢が、大学時代の奨学金獲得や、日本語スピーチコンテスト優勝に結びついたのでしょう。ウェブスターさんは、大学で奨学金を授与されたことで、日本語の学習意欲が更に高まり、学習時間が増え、語学力をますます磨いたそうです。2014年には、最難関の日本語能力試験N1級(5段階の最高レベル)に合格しました。
(写真:日本語を自在に操り、日本語への思いを語るウェブスターさん。)
ウェブスターさんは、2015年3月に大学を卒業しましたが、再び大学に戻り工学系の学位を取得するために準備中です。将来は、専門をいかし日本語を使った仕事に従事したいとのことでした。日本語教育基金では、ウェブスターさんが、ニュージーランドと日本の関係を深める架け橋となって、将来、活躍してくれることを期待しています。