モナシュ日本語教育センター活動内容
The Monash Japanese Language Education Centre (モナシュ日本語教育センター、以下MJLEC)は、日本財団の基金とモナシュ大学の協力により、モナシュ大学クレイトンキャンパス内に1996年に創設され、ディレクターのアン・デクレッツァー氏と事務担当のヒロコ・リュウ氏による運営のもと、ビクトリア州、南オーストラリア州、タスマニア州を中心にオーストラリアのあらゆるレベルの日本語教師に対するサポートを提供しています。
オーストラリアでは日本語は30年近く初等、中等、高等教育の全ての教育段階において最も人気のある外国語であり、30万人以上の学習者がいるとされています。大変活気ある日本語教育の現場に対して、MJLECでは様々な活動を通じて日本語教育の向上を奨励し支援することを目指しています。設立から22年以上を経て、MJLECはオーストラリアの日本語教育において多大な影響力を持つ重要なステークホルダーとなりました。
現在の活動は、教材作成、セミナー開催、研究活動、博士課程の学生に対する奨学金等で、ディレクターのデクレッツァー氏は国や様々な地域のカリキュラムへの答申も行っています。特に教師への支援活動に力を入れています。オーストラリアの教育事情に合わせた教材作成は大変重要で、モナシュ大学図書館内にあるMJLECのコーナーには、4,000以上の教材を有しています。
プログラムの詳細は、以下のURLからご覧いただけます。
http://artsonline.monash.edu.au/mjlec/ (英語サイト)
MJLECでは、日本語教育の動向を明らかにするために、日本語教育、学習に関するデータ収集にも力を入れており、これらのデータを基に執筆したNF-JLEP運営委員長のロビン・スペンサーブラウン教授と共著の“The State of Japanese Language Education in Australian Schools”(「オーストラリアの学校における日本語教育の現状」)という論文は、多くの研究者に活用されています。
日本語教育の変化
MJLECが創立されてから22年、オーストラリアの学校での日本語指導は、成長、変化を遂げ、近年ではContent and Language Integrated Learning(内容言語統合型学習、以下CLIL)、バイリンガル学習、イマ―ジョン教育といった新たな指導方法が取り入れられています。2016年には、それまでなかった全国統一の日本語のナショナルカリキュラムが作られ国全体での連携が生まれており、日本語教育の強化が進んでいます。ナショナルカリキュラム策定にあたりMJLECは多大な貢献をしました。オーストラリアのカリキュラムでは、コミュニケーションや状況理解など実用的なスキルの習得を目指しており、他教科と関連付けたり、統合型の学習を行ったりしやすいといえます。
オーストラリアでは、国のカリキュラムに沿っていれば各学校が自由に授業内容を定めることができます。授業の半分を英語で残りの半分を日本語で行うイマ―ジョン教育を行う学校は、国の全土にわたっていくつかの小学校で実施されています。しかしながら、中等教育段階では指導する側に高度な知識と語学力が求められるため、イマ―ジョン教育を実施している学校は1校のみです。新しい教育法の実践を目指す学校では、CLILを用いて教科の垣根を超えた統合型学習を取り入れることが増えてきています。小学校では、体育や音楽、科学、社会、地理、中学校、高校では、歴史や食品科学、地理などの教科を日本語指導を交えながら教えることが多いです。日本語のみを学ぶのではなく他の教科の内容を同時に学ぶことで、日本語学習がより意味のあるものとなり、生徒の学習意欲も増します。
日本語教育のアドボカシー活動
オーストラリアの学校制度では、州や地域によっては中学2年生まで外国語学習が必須の場合がありますが、どの外国語を教えるかは各学校が決めることができます。人気がある言語は、日本語とイタリア語、インドネシア語、フランス語、ドイツ語です。英語を母国語とするオーストラリアでは絶対的に必要な外国語がないため、その外国語が話される国の経済動向により学校で教える外国語を決めることが多々あります。例えば、1980年代にオーストラリアで日本語ブームが起こった一方で、近年では中国語を教える学校が増えています。このような背景をふまえるとアドボカシー活動は大変重要といえ、MJLECの活動の柱のひとつとなっています。学校、地域、全てのステークホルダーが、日本語教育、学習の有益さを認識し、またその認識を持ち続けてもらうことが課題です。
長年に渡り様々な方法で日本語教育の推進を実践してきましたが、最近では日本語学習者がその後のキャリアや学校生活でどのように日本語を生かしているかを紹介する動画を制作しています。小中高校生に対してどのように日本語が人生の選択肢を豊かにするかアピールし、日本語学習を続けてもらうことが狙いです。この活動を「I use Japaneseプロジェクト」と呼んでおり、年々動画の本数を増やしながら、様々な人々や経験を紹介していきたいと考えています。
前述のとおり、ナショナルカリキュラムが策定されてからもどのように教えるかはそれぞれの学校や教師に委ねられています。国の統一カリキュラムの発表にあわせ、MJLECでは国際交流基金シドニー日本文化センターと協働し、Network of Australian Japanese Language Teachers’ Associations(NAJATA)を立ち上げました。NAJATAには各州、地域の日本語教師会の代表が参加しており、情報共有や日本語教育、学習を全国的に盛り上げるため、毎年ミーティングを開催しています。
さらなる全国的な協働の例が、2012年よりMJLECが隔年で開催しているNational Symposium on Japanese Language Education(全豪日本語教育シンポジウム、NSJLE)です。オーストラリア全国からあらゆる教育レベルの日本語教育者が参加し、年々海外からの参加者も増えています。シンポジウムのプログラムには、日本語教育に関する最新情報の共有、優れた教育実践の発表、アドボカシー活動の動向や活動例の紹介などが含まれています。
MJLECに関する情報は、artsonline.monash.edu.au/mcjle/のウェブサイトからご覧いただけます。他団体などからのご連絡も歓迎します。anne.dekretser[a]monash.edu([a] を@に変換してください)(MJLECディレクター、アン・デクレッツァー)までご連絡ください。
(訳:NF-JLEP Association事務局)
英語の原文はこちらから